「制約人材の活用」をどのように会社で行うべきか? 国保さんにインタビューしました!(後編)

2018年が始まりました!年末年始は家族とゆっくりお過ごしになられましたでしょうか。

 

今春4月復帰予定の方は、復職まであと3ヶ月を切りました。

年末に会社の経営者・人事、上司の方向けに「制約人材をどう活用するのか?」について、育休プチMBAの代表であり、株式会社ワークシフト研究所 COO 兼 所長の国保祥子さんにインタビュー(前編)をお送りしました。

 

今回は続きの後編をお送りします。

 

—————————————————————————

組織全体の働き方改革推進について

 

――次は、組織全体の働き方推進についてお話をお聞きしたいと思います。

政府は働き方改革を推進しており、特に残業時間の管理は社会問題にもなっています。時短を利用した育休者復職者が増える中で、どういった働き方を企業は推進していくべきでしょうか?

 

国保 わたしは実は時短制度は推奨しておらず、残業なしフルタイムを推奨しています。本来職場のあるべき姿は、残業なしフルタイム。

残業をしないと回らない職場は、そもそもリスキーだと考えています。毎日残業しないと業務が回らないというのは、バッファがない状態ですよね。バッファを残しておかないとトラブルやクライアントに対しても突発的なことには対応できません。復職者がいようがいまいが、残業しなくても回る職場を作るべきだというのが基本思想です。

 

――なるほど。では、そのような残業がある職場を、残業なしの職場にどうやって近づけていけるのでしょうか?

 

国保 仕事には、省いてはいけない手間と省いても影響のない手間があります。組織が何でバリューをだしているか、バリューを維持するためには、捨てないタスク、捨てていいタスクを区別して、捨ててもよいものは捨てる。タスクを区別しないで、どうにか残業をなくそうと時間になったら会社の電気を消すなどの残業対策をしていると、数年後売上に影響してくる可能性があります。

 

――今の職場はどちらかというと、あれもこれもやったほうがいいとタスクが増えていく傾向にあります。人員が足りなくなったら、他から呼んで組織が膨れ上がっていっているような

 

国保 仕事は増やすほうが楽なのですよ。仕事を減らすほうが、誰かの顔がつぶれるとか、変に気を遣うので難しい。やらなくてもいい仕事は、実は大量にあります。タスクの断捨離をしないといけないですよ。そして断捨離するときは、組織にとって何が優先なのか、バリューにつながっているかを明確にしていく必要があります。

 

――タスクの断捨離!まさにわたしの職場に必要です。会社の人事部として、制約人材を抱える部所の上司に対する働きかけで効果的なものがあるのでしょうか?

 

国保 働き方の多様性が増えると、管理の手間はかかります。でも、その手間を管理職だけに押し付けてはいけないと思っています。マネジメント研修を行うなど、人事部としても管理職のサポートが必要です。また一方で、部下の自立性を高めることも大事。特に女性は、周りの期待に応えることを自分の価値と認識しがちで、自分の意見を明確に持っていない人が多いと感じます。

 

――そうかもしれないです(汗)。期待されていることをそのままやる人が多いということでしょうか?

 

国保 そうですね、多いのではないでしょうか。他人に評価されることでのみ自分の価値を認めている人は、自分の価値を周りに依存するので不安定になりやすいですね。上司の管理能力と部下の自立性は補い合える関係ですが、部下も自立性を高めるよう意識することが必要です。

 

――自分のことをいわれているような気分になりました反省です。どうせ言ってもかわらない、会社の一コマでしょと思っている自分がいたので改めます。。。

 

国保 そんなことないでしょう!(笑)言っても変わらないかもしれないが、言わないと100%変わらない。100%が99%になるかもしれない。上司はこういうことやりたい!といってもらったほうが嬉しいと思いますよ。

 

――ちゃんと言うようにします!宣言!(笑)

女性活用に関する企業の取り組み例

 

――働き方改革の一つとして、企業で女性活用も重要視されていると思います。女性活用に関する企業の取り組み例があれば教えてください。

 

国保 女性活用がうまく推進できている企業は、取り組みを女性だけにとどめていないですね。全社員の活躍のために取り組みをしていて、その中で子育て中の人に不利益なところを修正するというスタンスです。女性社員のために取り組みをやっているわけではなく、競争戦略の一つとして捉えています。

 

――例えばどんなことをしているのでしょうか?

 

国保 有名なのはサイボウズ、カルビー、ロート製薬、ユニリーバ、クラシコムです。

例えば、ロート製薬は兼業を認めています。本業にプラスしてやりたい仕事をおおっぴらにし、それが社員にとって成長できる機会になっています。自分が伸ばしたいと思った能力を兼業先で伸ばすことができるのです。

 

――面白い!兼業でスキル・能力を伸ばし、社員の成長を考えている企業なんですね。

 

国保 ユニリーバは、WAA(Work from Anywhere and Anytime)という働く場所と時間を自分で選べる仕組みを導入しています。カフェでも在宅で図書館でもOK。子育て中の人は当然助かるし、子どもがいなくても、通勤時間セーブのために使える。成果を出してくれるなら、手段は社員自身で選んで良しという制度なのですね。

この制度は働きやすさが高まるのはもちろん、社員の自立性が高まる。仕事を自分でデザイン、コントロールしている感が育つ。それがパフォーマンスにつながっていきます。

自分で選択し、決定するという行為で仕事の満足感があがります。コミットメントもあがるし、成果もあがる。例えば、雪でも会社に来い!と言われると会社にコントロールされているなという気持ちにつながり、会社に行ってからのパフォーマンスは下がります。

 

――確かに(笑)自分の会社は在宅可能なのでやらされている感は低いですね。妊娠中、雪や大雨で在宅で仕事ということもありました。でも在宅だからといって手抜きをするわけではなく、その日やるタスクを上司に宣言したり、コミュニケーションはオンラインで実施するなどしました。意識してなかったですが、自分で選択して仕事をしているという満足度があったのかも。

 

国保 それは生産性を下げないやり方ですよね。雪でもなんでも会社に来いといわれると文句を言いながら会社で仕事をしてやらされ感があります。自分で選んでいるからこそ逆に手を抜けない。自分で選んでいるという満足度でコミットメント上がるし、モチベーションあがれば成果もついてきます。子どもも自分が選んだ洋服なら着てくれるのと一緒です(笑)

 

――なるほど。確かにそうですね!

 

国保 クラシコムは18時に帰りますという戦略を取っています。すべての仕事が18時に終わるように設計しているのですね。

 

――すごい!どうやって実践しているんでしょう?

 

国保 業務の断捨離をものすごくやっているそうです。毎日18時に帰ろうと思うと会社自体の自律性が大事です。例えば、売り上げの8割をにぎっているクライアントから急な仕事を頼まれたら断りづらいですが、そういうときに断れるような立場を築かないといけないという考え方で戦略を整えてきています。クライアントの言いなりになることは頭を使わなくてもできますが、クライアントのいうことを聞かずに、いかに売り上げを上げるかは頭を使わないとできません。とても戦略を考え抜いている企業です。

 

――まさに理想の働く場所ですね!

 

国保 たまたまクラシコムさんの社長と副社長が北欧に行ったときに、皆早く帰っていて、かつ成長している企業を目の当たりにしたそうです。その時に、残業しなくても事業を成長させていくことが可能だと確信して、常にどうやったらそれができるかを考えているそうです。

こうした企業を見ていると、「残業せずに事業を成長させるのは無理」という企業は、逆に残業しているから成長しないのでは?という気になってきます。残業ばっかりだと、余裕がなく次の事業の柱になるようなネタが生まれにくく、低成長につながっているのではないかと感じています。

 

――なるほど今まで自分の中にあった固定概念がひっくり返されたようです。自分の頭が固くなっていたように思います。

 

国保 今は残業しないと成果がだせないと皆が思っているから残業をしている。残業しなくても成果が出せるという感覚が広がっていけば、皆残業しなくなると思います。成果を出せないときの言い訳として、でもこんなに頑張っていますとエクスキューズしておきたいというのがあるんでしょうね。

 

――復職後、残業をしないやり方を自分なりに考えていこうと思っていますが、現在社会的にも会社的にも変革期にありますね。

 

国保 そうですね。毎日残業しないとまわらない職場に問題があります。本来はそこにメスをいれるべきだし、管理職や部下に残業できない人がいるというのは、そういう体制に強制的に移行するきっかけになります。育児で帰りたいのは本人のわがままと捉えがちですが、体調不良や介護など、インフルエンザで倒れるというのは誰にでもある話です。予測可能な育児すらまわらない職場は、他の突発的事項でもまわらないでしょうね。

 

――客先に常駐することもあるのですが、クライアントが自分たちのどこに価値を見出しているかも大事で、残業してここにあなたがいることが価値という圧力を感じたこともあります。社会全体を変えていかないと自社組織が働きやすくても厳しいと思いました。

 

国保 社会全体を変えていくのも大事であるし、もし長時間誰かがそこにいるということが、本当にクライアントが望む価値ならば、シフト制を組むべき。誰かはいるが個人長時間労働にならないという仕組みをつくるべき。ただ長時間人がいることに本当に価値があるかは一度議論の余地があるでしょうね。あと、会社としてよく考えたら、この顧客のリクエストに応える必要はないという判断になるかもしれない。そうなると、たとえ一部のクライアントを失っても自社がやっていける価値を考え抜かざるを得なくなりますが、それは競争戦略を考え、競争優位性を築き上げることにつながります。特定のクライアントを失うのは怖いですが、それでもやっていけるように自分たちのバリューを高める意識が高まるというのは大きいと思います。もしくは通常部隊と特急部隊をつくり、特急に対応できることが競争優位にするという戦略もありますね。

 

――本当そうですね。紹介いただいた企業を参考に、今の職場も改善していくべきだと実感しました。ありがとうございます!

 

※今回国保さんが紹介されていた企業の働き方戦略の詳細情報は、国保さんの著書『働く女子のキャリア格差 (ちくま新書)』に掲載されています。どうぞ読んでみてください!

女性社員のキャリア形成について

 

――次は女性社員のキャリア形成についてお聞きします。復帰後、管理職などのキャリアアップを望んでいるが、不安に思っている方も多いと思います。

 

国保 前提条件として、わたしは管理職つまり意思決定者になったほうが子育てとの両立は楽と思っています。例えば、自分がリーダーだったら会議を18時以降に入れませんが、プレーヤーだと従わざるをえないですよね。ただ既存の管理職は、そういうやり方をあまりしていないから、管理職になりたくないという意見があるのだと思います。既存の管理職にはなりたくないのです。でも管理職になったほうが楽になるし、むしろ両立しやすい世界があるとわかれば皆管理職になろうとすると思います。

 

――新しいタイプの管理職になるというのは、既存の組織内ではハードルが高そうです。既存の管理職の中で、私は残業しないと言えるかな?と思ってしまいました。

 

国保 わたしのスタンスはこうです!という要求だけでは通らないと思っています。ただ、こういうやり方でも成果を出せます、つまり目的は一緒だけど手段の変更を提案するというやり方はあります。発言力でいうと、プレーヤーではなく、管理職だからこその影響力もあります。

 

――成果を出していたら、他の人たちもそれ以上やってとは言いづらいですもんね。

 

国保 少なくともこの指標では十分にパフォーマンスをあげていますと言えるのと、言えないのとでは肩身の狭さも全然違います。

 

――そういう働き方もできるというのが社会的に広まっていくと、管理職をやってみたいという人も増えそうですよね。

 

国保 実例を目の前でみるとそういう世界もありうるんだな、じゃあやってみようかなと気にはなりますよね。

 

――会社によっては、時短制度を活用している女性は、昇進を望めないことが多いのではないでしょうか?

 

国保 キャリアアップを望めない環境に無防備に身をおいてはいけないと思います。場合によっては時短でないほうが良いこともあります。毎日ではないけれども、ときどきは残業できる環境をつくることが重要です。会社からしても、自分のやり方は一切変えたくないがキャリアアップはしたいというのは、少しわがままに見えてしまうでしょう。自分もできることをやっている、組織に貢献する意思があるから機会を与えてほしいという交渉になります。時短を取ると、キャリアアップを望んでいないというメッセージに捉えられることが多いので、時短を取るならばなおさらコミュニケーションをとって、ちゃんと貢献する気持ちと備えがあることを伝えないといけないと思います。

 

――そうなんですね。時短を取ろうと思っていましたが、キャリアアップを望んでいないというメッセージにとらえられがちでしょうか?

 

国保 例えば保育園のお迎えは一切行けません!と夫に言われると、育児のモチベーションが低そうに見えますよね。毎日は行けませんが、できることを探してやりますとか、木曜だけはお迎えに行きますと言われると、モチベーションは全然違って見えませんか。

 

――一回育児に置き換えると客観視ができますね!良い技を教えてもらいました(笑)時短を取るかどうか考え直そうかな。

 

国保 なんとなく時短制度を選ぶことは推奨していません。フルタイムでいくにはどうするかをまず考えて、どうしても無理そうであれば時短を選ぶというほうがいいと思います。

 

――わたしの会社では、とりあえず時短を取るという人が多いです。会社からしても育児大変だろうからとりあえず時短したら?と言われています。

 

国保 時短を取るとマミートラックにのってしまうこともありますので、時短を取るなら戦略的に取るべきです。育児に置き換えて考えてみると、パートナーから「とりあえずお迎えはやりません」と言われるのとやる気あるのかな?と感じてしまいますよね。そしてやる気がない人に学習の機会は与えられないし、学習の機会がないと仕事も育児もやりがいを感じにくいのです。それが本人の希望ならいいのですが、あとからそんなつもりじゃなかったとならないよう気を付けてください。

 

――確かに。「とりあえず時短」は避けようと思います。自分自身のキャリア形成について整理し、自分なりの戦略を立てていきたいです。パートナー含め、家族と改めて復職後の働き方について、相談したいと思いました!

 

国保 今日お話ししたことを日々考えていますが、自分が考えていることを皆知っているわけではないとわかり、本を書きました!ぜひ皆さん社会でどんどん活躍してください!!

 

――おおー!早速読んでみたいと思います。国保さん、今日はありがとうございました!頑張ります!

 

※国保さんの著書『働く女子のキャリア格差 (ちくま新書)』

—————————————————————————

 

前編・後編にわたる、国保さんのインタビューいかがだったでしょうか?

ご自分・ご自分が所属している組織に当てはまる…と思った内容があったのではないでしょうか?

インタビューをしたメンバーからはこんな感想をいただきました。

 

========================

・育休プチMBA勉強会には、自分の成長や復職後の両立のため=自分のために参加していますが、結果として、個人の問題解決力が上がって組織に貢献できるようになるということを再認識しました。

個人の仕事の成果が積み重なって組織をつくっていくのだから、よく考えると当たり前ですが、散らばっていた自分の考えが、国保さんの話をきいてつながった感じがしました。

 

・子どもが生まれて制約人材になる自分の存在は、職場の皆にとって迷惑という遠慮の気持ちがありました。どうしても今までの自分の働き方にこれからの自分を近づけようとしてしまうからだと思います。

しかしそれを続けていては、自分も組織も成長機会を逃してしまうのだとポジティブにとらえて、仕事のバリューを大事にしながらタスクの断捨離や解決法を探っていきたいです。

このインタビューで心に残ったワードを育休手帳に書き留めて、これから復職して落ち込んだときや、空回りしたときのおまもりにしたいです。

 

・復職後のキャリア形成については、ネガティブなことばかりを考えてしまい、復職に対するモチベーションが高くありませんでした。しかし、インタビューを通して、子どもを預けながら自分の成長機会を逃して働くことは絶対やめようと思いました。自分のためにも、家族のためにも、働いてキャリアを積み重ねていき、楽しい人生を歩みたい!と改めて実感しています。

========================

 

インタビュー記事を読んで、皆様にも新たな発見があれば嬉しいです。

 

多くの気づきを与えてくれた国保さん、お忙しい中インタビューに応えてくださって、本当にありがとうございました!